バックれマン

バイトは最短2日でやめる

~ねずみのきもち~ 治験レポ(前編)

治験ボランティア というものをご存知だろうか、新薬を世に出すための臨床試験の最終過程で実験体になるボランティア、早い話が研究用モルモットである。

 

予選編

三月某日、一本の電話がかかってきた、僕は普段知らない電話は出ない(借金取りの可能性があるため)のだが何の気なしに出てみると昔登録した治験ボランティア団体からで、こう言われた。

「4月に治験があるのですがどうも募集が埋まらないので○○様にお電話を差し上げた次第なのですがお暇等御座いませんでしょうか?もちろん負担軽減費もお支払いしますので・・・」

要約すると「モルモットが集まらんから来ないか?金は出したるw」ということである。

しかし自分もドカタの身、親方と現場が最優先である、通常ならお断りだ。だが今月は現場が少なく丁度財布も心もとない、ひとまず話だけでも聞いてみよう。

「あぁー!どうもお疲れ様です!・・・そうですね、受けてもいいかなという気持ちもあるのですが自分も仕事があるので・・・ちなみに何泊でいくらくらいの協力費ですか?」

意訳すると「バイトより稼げるならええよ」ということである。向こうも察しているので「n泊n+1日×2回で(両手では足りないけど足も使えば数えられる)万円になります」

「バイト先でOKもらえたら行きます」

若干食い気味でこたえた。

 

親方からOKを貰い、スケジュールも抑えたところで先ずは事前検査、ここで

健康と判断されれば晴れて入院となる、数日前からの禁煙禁酒を経て都内某所で採血、採尿、身長、体重、体温と血圧を測定し開放される、数日ぶりのタバコに眩暈を覚え、牛カツ食って帰宅。検査はOKだった

 

入院編

0日目

いよいよモルモットとして収監される日が来た、数日分の着替えと各種ケーブル、ノートPCを持ち込み再度都内某所へ、初日は予備として数名多めに呼ばれている、つまり禁煙禁酒をし2週間ほどの予定を確保した挙句12.5%の確率ではした金とともに追い返されることもある、正直この瞬間が一番ドキドキする、採血採尿etc...全てを終えたら飯を食っておやすみなさい、だ

1日目

医者の声に起こされここが病院だと気づいたモルモットたちがのそのそと布団か巣穴かわからないものから這い出してくる、そして薬物投与前の採血とともに留置針(点滴の針のようなもの)を打ち込まれる、ここで留置針を刺されない人が出てくるのだがその人らは内心ドッキドキだ、なんせ先述の12.5%に選ばれたかもしれないのだ、そうこうしてるうちに刺されなかった彼とその隣の刺された人が呼ばれ何やら説明を受けている、刺されなかった彼は失意と納得の表情だが刺された彼はまさに鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしながら帰り支度をしていた、そして別の人が空いたところに移ってくるやいなや薬が運ばれる、つまり残った人は○○万を勝ち取ったのだ、みな安堵の表情を浮かべている、そしてここからかモルモットのモルモットたる所以である、薬を飲んだあと15分おきに採血されるのだ、この間食事やトイレはおろか体を動かすことすら禁じられるのだ、あまりに多い採血に僕は若干の興奮を覚えつつあった、体から血が抜けてゆくのが気持ち良くて目がトロンとしてしまうのだ、十数回の採血を終えてその日は終わり、風呂を禁止されたまま床に就く、体がベタベタするが致し方なし。

2日目

少し早めに起床、ここからは採血のペースも格段に落ちてやることがない、思ったことといえば風呂は精神衛生に響くということと採血は毎回針を刺された方が気持ちいいということである、あまりに暇過ぎてこのようなものを綴るに至ったわけだ、現在進行形で暇なので採血好きは是非とも連絡して欲しい。